いわゆる舞台芸術にも『見立て』の方法は
色んな場面で使われています。
一番分かりやすくイメージしやすいのは
落語かもしれません。
落語は道具や衣装に頼らず落語家一人の和談によって役や状況を表現しますが、その際に唯一持っている小道具が “扇子” と “手拭い” です。
この扇子を用いて煙管を吹かす仕草や箸でもの食べる仕草。手拭いは財布や手紙、煙草入れなどに
あらゆるものに見立てて観客に分るように表現しながら談話を進めて行きます。
落語家の必需品の扇子と手拭い
扇子の存在
また「扇子」は落語においてだけではく
あらゆる分野で色んな見立て方をされています。
茶道では茶室に入る際挨拶をする時の結界とし
能や舞踊においては扇を持って舞い
自分の体を使うことによって
幅広い表現を可能にし
相撲の行司が軍配に使う団扇のようなものは
元は扇子が代用されていました。
投扇興(とうせんきょう)と呼ばれる伝統遊戯
では扇子を投げて得点を競い現代でいう
ダーツのような使い方もされます。
扇子は日本の文化においてとても重要な道具の一つでありますが、各分野でこれだけの
使われ方があるという意味で
その存在自体が日本の「見立て文化」を象徴している様にも思えます。
落語と同じ江戸時代に生まれた
演劇である歌舞伎は
出雲阿国が京都でかぶきおどりを演じて大人気になったのが始まりとされていますがその後に流行ったとされる
遊女歌舞伎ではスター遊女を禅宗の和尚さんに若衆歌舞伎では主役を勤めた美少年たちを仏像に見立てて褒める習慣があったとされ
その成立に見立てが重要に
関わっていると考えられています。
また歌舞伎の中のストーリーには歴史・説話や実際におこった事件が背景に隠されている芝居が多くあり複数の物語を絡み合わせて作られる作品を「綯交ぜ」と呼びます。
これには時代を飛び越えて物語の共通性を見つけ出す『見立て』の世界が働いているといえるでしょう。
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